数年前の話である。知人の先祖代々のお墓が洪水で跡形もなく流された、という話を耳にした。自分の入るお墓をこれからどうしよう、と、途方に暮れていた。
これは特別なことではなくなる、と感じた記事が、昨日発売の『日経ナショナルジオグラフィック』に載っていた。跡継ぎがいなくてお墓がなくなる、という日はもう来ていると思うが、2100年までには、お墓どころか、住む場所さえなくなるかもしれない。

記事によると、こうである。
西南極に、パインアイランド棚氷という広大な棚氷がある。この棚氷は、アムンゼン海に注ぐ大規模な氷河のひとつ、パインアイランド氷河の末端が海に張り出して浮かんでいる部分だという。

(以下に、記事をわかりやすくするために順序を変え、抜粋しつつ、記事を転載する)

西南極氷床と呼ばれるその氷は、面積がフランスの国土のおよそ2倍、厚さは最高で3000メートルを超える。氷が海面下にも分布しているため、西南極氷床は海水温上昇の影響を受けやすい。棚氷が崩壊し、西南極の氷がすべて海に流出すれば、世界の海水面は平均3.3メートル上昇し、世界各地で沿岸部が水没することになる。

パインアイランド棚氷からは、2015年から2016年にかけて面積580平方キロの氷山が分離して、アムンゼン海に流れ出た。この海域の水温は過去数十年に0.5℃余り上昇し、氷が解けて崩落する速さは4倍になった。

パインアイランド棚氷は大半が厚さ400メートルほどだが、1994~2012年の間に平均45メートルも薄くなった。それ以上に気になるのは隣のスウェイツ氷河で、この氷河が崩壊すれば、西南極氷床の大半が不安定な状態に陥るとみられている。

「これらは地球上で最も急速に後退している氷河です」と、NASA(米航空宇宙局)のジェット推進研究所の雪氷学者エリック・リノーは話す。リノーによると、西南極氷床の崩壊はもはや避けられないという。問題は崩壊がいつ起きるか、それに備える時間が人類に残されているかどうかだ。

温暖化の影響が最も顕著に表れているのは、南極半島だ。北から流れ込む暖かい空気と海水の影響をもろに受け、半島西側の年間の平均気温は1950年と比べて2.5℃近く上昇した。温暖化のペースは世界のほかの地域より数倍も速い。冬の気温はなんと5℃も上昇した。かつては1年のうち7カ月は海面が氷に閉ざされていたが、今や海氷ができるのはわずか4カ月しかない。

今のところ最も信頼できる予測では、南極の氷の融解により、2100年までに海面が1メートル余り上昇する可能性があるとされている。温室効果ガスの排出削減がどの程度進むかにもよるが、グリーンランドの氷や世界各地の氷河の融解を加えると、2100年までに海面は1~2メートル上昇すると考えられる。
(『日経ナショナルグラフィック 2017年7月号』より抜粋)

景気がいい、と新聞等では書かれているが、実感している層は、ごくわずかではないだろうか。人口減と社会保障費の増大で、私たち現役世代はもとより、若い人たちの多くはさらに苦しい生活を強いられ、貯蓄もできないだろう。医療費増大で国民皆保険制度は大なたをふるわない限り、近い将来崩壊すると私は思う。

私には子供はいないけれど、子供がいたり、孫がいたり、これから子供を持つ人たちは、こうした社会的環境のほかに、上記のような地球環境が待ち受けているとなると、未来に対する不安はもっと大きいのではないだろうか。

日本の国土はどうなるのか。世界はどうなるのだろう。暗澹たる気持ちになる。

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