今日、70回目の終戦記念日を迎えました。
未来もこの記念日を数えることができるのかどうか・・・・・・。わかりません。
戦争とは何なのか、それをつきつける一編の詩、「Home Sweet Home」 をご紹介します。
Home Sweet Home
敵なしにはありえない戦争。
憎しみをもって打ち倒すまで敵と戦う戦争。
いつでも戦争は、そう考えられてきた。
違う、とわたしはわたしに言った。
敵を打ち倒すべき戦争によって
危うくされてきたのは、敵ではなくて、
いつでもHomeだったのだ。
Home というのは、人が
そこへ帰ってゆく場所のことだ。
わたしはわたしに言った。戦争くらい、
Home というものをつよく、
するどく意識させるものはない。
戦争にいったものは、死んだ者も
生き残った者も、かならず、
Home へ帰らなければならないからだ。
それが戦争だ、とわたしはわたしに言った。
Home Sweet Home という
ことば、知ってる?
アメリカを激しく引き裂いた
南北戦争に至る時代が生んだ歌のことば。
暗殺された悲しい目をした大統領が
愛したということば。すべての
戦争の目標は、戦闘ではなく、帰郷なのだ。
わたしはわたしに言った。
紅茶にしよう。ピラカンサの実が、
日の光をあつめて、今年も赤く色づいてきた。
季節と共にある一日の風景が好きだ。
これがHome だ、とわたしはわたしに言う。
戦争をしない国にそだったのだから、
わたしは心底に思い留める。世に
勝者はいない。敗者もまた、と。
『奇跡-ミラクル- 長田弘 著』(みすず書房)より
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